2月7日、俳優の つるの剛士、(株)手塚プロダクション 取締役の手塚るみ子、 (株)ネイキッドジェネラルマネージャーの中川伸作が『FLOWERS BY NAKED 2020-松山・道後NIGHT-』トークイベントに登壇した。
愛媛県松山市を代表する観光スポットで国重要文化財の道後温泉本館は、耐震補強などのために保存修理工事をしながら営業中。工事期間ならではの楽しさを演出するため、オリジナルアニメの配信や、工事中の部分をすっぽり覆うラッピングアート、プロジェクションマッピングなどさまざまな企画が展開されている。
手塚治虫原作『火の鳥』とコラボしたオリジナルアニメーション『火の鳥“道後温泉編”』では声優を務めている つるのは「声優というジャンルはほとんど経験が無いんです。僕なんかで大丈夫かな、と思う事もあったんですけど、今後の道後温泉の中に刻まれるであろう作品に参加出来たので、道後温泉に行く際には第2に故郷ような思いを持って行かせてもらう事になると思います。」と思いを語った。
手塚は父である手塚治虫について聞かれると「印象的に残っているのは書斎に向かって書いている背中が1番印象的に残っています。子供の頃は、その背中は頼りになるお父さんの象徴でした。仕事をしている今となっては、その背中は私だけのものではなく、あらゆる人に夢と希望とエンターテイメントを届けるんだという、使命感を背負っているような背中だったんだなと感じます。」と子供の頃とと今の心境を重ねながら振り返った。
すると、つるのが「リアル ピノコですもんね。手塚先生が娘さんモデルに「あっちょんぶりけ!」ってね。」と手塚治虫 作『ブラックジャック』に出てくるキャラクター・ピノコの話題を出すと、手塚は「よくそう言われております(笑)。ブラックジャックを描いていた時期が丁度、幼稚園児だったので。ピノコや、他にもいろんな登場人物が自分に似てたりするのを見ると、何だかんだで子供をよく観察していたんだなと思っていて、ブラックジャックとピノコの関係は冷たいようで、いざという時はピノコを助けるという父性を出してくる所は、父が実際に私にような娘を持ったからこそ、描けたんじゃないかなと思いますね。」と語った。
また2月9に手塚治虫の命日を迎える事に関して手塚は「父が生前「漫画家なんて死んでしまったら忘れられてしまうんだ。だから俺が死んでも3年は内緒にしておけよ」って言っていたくらい、作家として消え去ってしまう事を懸念して、苦しんでいる事があったんです。その思いを思うと、次の世代にも手塚治虫を知って、読んでもらいたくて父の作品のプロデュースをするようになりました。」と思いを語った。
様々な手塚治虫のエピソードが語られる中、つるのは「手塚先生自身が火の鳥だったんだなっていう感じがしますよね。手塚イズムが残り続けて、それが新しくいろんな人と生まれ変わって・・・手塚先生が火の鳥だったんだなという印象ですね。」と改めて手塚治虫の凄さを感じているようであった。
中川も「道後温泉とコラボレーションさせていただく事も、伝統と僕たちのやっている表現を合わせて新しい文化を作っていけたらなと思ってやっています。同じように手塚治虫先生の、素晴らしい作品に対して新しいチャレンジをさせていただくというのはワクワク以外の何者でもないんです。うちのスタッフ全員が楽しんでやらせていただいています。」と心境を明かした。
2人の話を受け、手塚は「火の鳥は『永遠の命』がテーマの作品で、火の鳥に限らず手塚治虫の作品のテーマとして『どう生きるか。もらった命をどう尽くすか。』という事が大きな命題になっているんだと思うんです。生物学的な遺伝子は限られていて、手塚治虫も60歳で生物学的に亡くなってしまった。けど亡くなってからの30年間、いろんなクリエーターの方々とお仕事をしてきた中で、全然 手塚治虫は死んでいないなと。生前に手塚治虫が ばらまいた文化的な遺伝子は、様々なクリエーターの方が心の中に持っていて、その遺伝子を何かに使って作品を出してくれているだろうなと思っています。文化的な遺伝子というものはバトンがドンドン渡されいって作家が亡くなったとしても続いていく。そうなる事で作家は永遠の命をもらえるんだろうなと感じております。」とコメントした。
最後に、つるのは「改めて凄いプロジェクトに参加させてもらっているんだなと実感しました。REBORNは再生じゃなくて新生だなって思っています。新しく未来に向かって次の作品が生まれている感じがするんですよね。道後温泉の歴史を振り返り、新しく生まれ変わる途中にこういう作品ができましたけど、100年後にまたこういう企画があった時に今度は僕や中川さんや手塚さんが登場して歴史のストーリーの1つに刻まれると思うと凄い事だなと思います。これから皆さんが、この作品を見て道後温泉を大切にして行くんだろうなと思います。」と思いを語り、トークショーは幕を閉じた。
(文・写真:山岸一之)
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