3月18日、舞台『砂の女』の公開ゲネプロが行われ、ゲネプロ前に、森田剛、藤間爽子、山西竜矢(脚本・演出)が作品への思いを語った。
原作は安部公房の同名小説。砂丘の村に迷い込んだ男と、砂穴の底の家で暮らす女による物語で、閉ざされた状況の中で変化していく関係性や心理が描かれる。
森田は、出演のきっかけについては、以前から面識のあった山西が『砂の女』をやりたいと話していたことが大きかったと明かした。映画版も好きだったという森田は、映像作品も手がける山西がこの題材をどう舞台として立ち上げるのかに興味を惹かれたと言い、稽古では演出家のイメージを出演者全員で共有しながら形にしていったと振り返った。
藤間は、山西、森田のいずれとも今回が初めての作品づくりだったと語る。台本、小説、映画に触れた段階で、この作品は自分にとって挑戦になると感じたと言い、実際に稽古を重ねる中でその難しさをより強く実感したという。一方で、稽古場には穏やかな空気が流れていたとも話しており、限られた空間の中で砂の世界をどう表現するかを丁寧に積み上げてきた時間だったことをうかがわせた。
山西は、以前から安部公房作品に親しんでおり、『砂の女』も特別な作品のひとつだったとコメント。舞台化にあたっては、独自の解釈を前面に押し出すというより、原作に忠実でありたいという思いが強かったと語った。
その一方で、小説や映画で表現されていたものをそのまま舞台へ置き換えることはできないため、実際の砂を用いない空間の中で、いかに閉塞感や不条理さを立ち上げるかを意識して台本を書いたという。
また山西は、稽古を通してこの作品が持つ反復の感覚に、自身も強く引き込まれていったと述べた。砂穴の中で営まれる日々は同じことの繰り返しのようでいて、少しずつ見え方が変わっていく。その感覚は原作を読んだ際の印象にも重なるもので、演出する側としても作品の迷宮に入り込むような感覚があったと明かした。
会見では、森田が演者として作品を積み上げてきた実感を語り、藤間が役に向き合う難しさと挑戦を口にし、山西が原作への敬意と舞台化の試行錯誤を言葉にした。
それぞれの発言からは、閉ざされた空間の中で展開する『砂の女』の濃密な世界が、稽古を通じて着実に立ち上がってきたことが伝わってきた。
東京公演は3月19日から4月5日まで紀伊國屋ホールで上演。その後、仙台、青森、大阪でも公演を行う予定だ。会見で語られた言葉の数々は、本作が観る者を静かに深く引き込んでいく舞台になることを予感させた。
(文:山岸一之)
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